「SRPが終わったので、見てもらえませんか?」タキノ歯科医院の若手歯科衛生士がチェックを頼んだのは、先輩にあたる野澤さやかさん。8倍の拡大鏡とライトを装着していることが、院内での信頼につながっています。そんな野澤さんが初めてサージテルを手にしたのは5年前でした。導入当初は“自分の成長のため”だったのが、今は“患者さんのため”に使うべきものなのだと感じています。
私って、ちょっと変わっているのかもしれません。昔から“人と同じ”がイヤだったんですよね。小学生の頃も習字道具とか絵の具セットは、みんなが選ばないようなものを選ぶタイプ。「私だけ違う」ということに個性を感じていたかったし、私らしさをずっと大事にしたいと考えていました。
歯科衛生士になったときも、気持ちは同じでしたね。「自分にしかできひん仕事をしよう!」と、社会に出る前から決めていて。その意志を表明するために持つようになったのが、“マイサージテル”です。5年前の2.5倍に始まり、昨年の秋には8倍に倍率を上げています。
最初は、ドクターのお下がりを他の歯科衛生士と一緒に使っていたんですよ。でも、「必要なときだけ借りる」というのはなんとなく中途半端な気がして……。自分のものにしてこそ、拡大して見るという分野を追求できると思いました。決意するまでにちょっと勇気はいりましたが、今は導入して本当によかったです。
自分にしかできない仕事を追求するには、まず自分がやっていることをきちんと認識しておくのが一番だと思います。拡大鏡を使うようになって改めて気づかされましたね。
たとえばスケーラーで縁下をサーッと触ると、歯石があるのがわかるときがありますよね。でも、結局〝手探り〟になってしまうんです。後輩がSRPのチェックで私を頼ってくれるのも、そこだと思う。歯肉の色とか触った感じで「なんか怪しいな」とは思っても、それが歯石なのかCRの切片なのか、仮に歯石だったら今のスケーリングでちゃんととれたのかまではわからない。見えなければ、どうしたって確信できないままなんです。
裸眼のときも2.5倍のサージテルを使っているときも、「もうちょっと見えればスッキリするのに」という気持ちが常に自分の中でありました。そんな気持ちを持ったまま診療するのは、もちろん患者さんに対しても申し訳ないこと。歯科衛生士だからある程度までできていれば大丈夫というわけではないからこそ、こだわりたい分野だったんです。
今はそのジレンマもなくなり、拡大鏡を使う意味を患者さんにも伝えることができています。
先日、初診でいらしたのは30代の女性の患者さんでした。それまで他の医院へ行かれていたんですが、歯肉炎がなかなか治らないということでこちらを選んでくださったそうです。私がけっこう深いところまでスケーラーを入れると、最初は「そんな場所、触られたことないですよー!」と驚かれていましたね。でも、その原因となる歯石がとれていなかったから腫れが引かなかったのだと説明したら、妙に納得されて。しっかり見て、確信を持って伝えられたからこそ、「見えないところにも歯石はつくんだ」と新たな事実を知ってもらえたんだと思います。
私が歯科衛生士でなければ、患者さんと出会うことも患者さんの健康に関与することもなかったはず。それまで全然顔も知らなかった人の役に立てるのだから、やっぱりこの仕事ってすごいですよね! いつか歯科衛生士じゃなくなる日まで、ずっと臨床で患者さんと関わっていきたいです。