「私、歯科衛生士としては遅咲きなんです。
でも“何歳だから”っていうのはあんまり関係ないんじゃないかな」
充実感いっぱいの表情でそう話す仲主佐恵子さんは、中学生と高校生の娘さんを持つお母さんDH。
子育てもひと段落し、仕事でもう一花咲かせようと日々スキルアップに励んでいます。
「もっと勉強しなくちゃ」と思うようになったの、実はここ4~5年です。臨床歴は長いけど、それまでは本当に“経験だけはある”という感じでしたね。子どもを育てながらだと、何かスキルアップしたいと思ってもなかなか自分の時間が取れないんですよ。上の子が5歳、下の子が3歳になった頃からパートとして現場には復帰したものの、どちらかというと当時は生活費を稼ぐために働いている意識が自分でも強くて。同僚から勉強会に誘われても行く気になれなかったし、一歩を踏み出せないままあっという間に月日が経ってしまいました。
でも、子どもたちもだいぶ手が離れて、こちらの医院でフルタイムで働くようになって変わりましたね。そろそろちゃんと仕事と向き合おうと思いました。なんとなく過ごしているうちに忘れてしまった知識や技術を、今ようやく取り戻しています。昨年は月に1回、大阪でSRPの講習を受けていました。娘みたいに若い方たちと一緒に学ぶのはすごく刺激的でしたよ。同じ内容の講義を受けているのに、私と彼女たちでは気になるところが全然違うの! 物事をいろんな視点から考えられるようになりましたね。
それともうひとつ、勉強の他に興味を持ったのがサージテルです。先生方が使っているのを見て、「私も3倍くらいに拡大したらもっと的確なメインテナンスができるかな」と思いました。だけど、結局選んだのは5倍。歯牙に残ったプラークや歯石はもちろん、見えれば見えるほど歯肉の変化も見逃さずに済むので高めの倍率にしてよかったです。毎日が新しい発見の連続で、今が一番歯科衛生士を楽しんでいるかもしれません。
やっぱり淡々と仕事をしているときは、患者さんがついて来てくれなかった気がします。今となっては自分を見つめ直すいいきっかけとなったのですが、一度すごくショックなことがありました。ある患者さんから、「次の予約は別の歯科衛生士さんにしてください」と言われてしまったんです。
最初は「ちゃんとやったのになんで?」と不思議でした。だけど、よくよく考えたら思い当たる節がポツポツと。たとえばスケーリングをしたあと「ここに歯石がついていました」などのフィードバックをすることなく終わらせてしまったり、取ることに一生懸命でかなり痛い思いをさせてしまったり。SRPのときに出血するのはよくあることなのであまり気にしていなかったけれど、サージテルで拡大すると想像以上に歯肉が傷ついているんですよ。「痛い思いをさせてしまいましたよね」と一声かけられたら。そもそも歯肉を傷つけないように自分のスキルを上げていたら……。患者さんが離れていくことはなかったと思います。
知識も技術も、患者さんを想う気持ちも。すべてそろって初めて、歯科衛生士としての信頼が得られます。少し時間はかかりましたが、ここで気づけてよかったかな。今後は、この自分の経験や考えを後輩の子たちにも伝えていきたいですね。医院の中でもお姉さんである私が、お互いに知っていることをシェアできる空気感をつくっていく。そうすることで、患者さんもスタッフも居心地のよい医院ができるはずですから。