「朝、ユニフォームを着て診療室へ向かっているときは
まだ体が寝てるな~って感じなんですけど。
患者さんを前にサージテルをかけると、急に歯科衛生士スイッチが入るんです!」
ハツラツとした表情でそう語ってくれたのは、溝口花穂さん。
ある患者さんとの出来事をきっかけに、
プロ意識がむくむく芽生えてきたといいます。
歯科衛生士になって1年目のとき、ある患者さんに怒られたことがありました。スケーリングの手際が悪く、「時間がかかりすぎ!」と……。もともと器用なほうではないし、自分でもなかなかうまくできないなとは思っていたけど、やっぱりショックでしたね。テキパキこなす先輩たちの姿を見て、「私は人より頑張らないとダメなんだ」とすごく落ち込みました。
だけど、今振り返ると当然だよなって思います。患者さんにとって、担当の歯科衛生士が新人かどうかなんて関係ないじゃないですか。むしろ、私自身がもっとプロ意識を持たなきゃいけなかった。そう気づかされてからはガラッと変わって、先輩にどんどん質問したり、スケーリングの後も取り残しがないか先生に確認してもらったり。必死でこの仕事と向き合うようになったと思います。
実は、サージテルをちゃんと使いこなすようになったのもその頃からなんですよ。それまでは先生から言われるがまま使っている感じで、逆につけないほうが見えるような気もして(笑)。でも、意識して使うと全然違いますよね。見るべきところだけ、本当にそこだけに集中できるから、やみくもに手をつけなくなるというか。余計な歯肉に触れないから痛みも与えないし、時間も短縮されて効率的です。「あなたのクリーニングは気持ちよくて寝てしまう」なんて言われることも! 今なら、あのときの患者さんにも胸を張ってスケーリングできるかもしれないですね。
この前、ビックリすることがありました。ある患者さんの口腔内が、いつの間にか劇的に変わっていたんです!ここ数年診させていただいている男性で、最初にいらしたときは隣接がプラークだらけ。SRPへ入る前にとにかくスケーリングとTBIが必要なほどだったのに……。ここのところ急にプラークが付かなくなって、隣接部もほとんどありません。3ヶ月に1回の精密なメインテナンスを行なったことで口腔内がコントロールされたのはもちろん、セルフケアもしやすくなったのだと思います。「最近フロスも頑張っているし、禁煙も始めたんだよ」とこちらが今まで提案したことも何気なく実行してくれていて。うれしかったですね。ただお掃除をしていればいいわけじゃなくて、こうして結果を出してこそプロってことなんだと思いました。
今の私にとって一番の褒め言葉は、「あぁ、今日もあなたがいて安心した」。私がいるから歯医者さんも怖くない、私がいるからお口の中もスッキリする。そして、むし歯や歯周病にもならない。そう感じてもらえると、こちらもホッとします。実はさきほども「よかった、今日もいたね」と言ってもらえたんですよ。テンション上がりますよね(笑)。
歯科衛生士になりたての頃は失敗してしまったけれど、そのおかげで学べたし、今の患者さんにも喜んでもらうことができています。すべては、あのとき注意してくださった方がいたからですね。教えていただいたことへの感謝の気持ちを、今後も仕事で返していこうって思っています。