最近、「患者さんが“応えてくれている”」と
感じることがよくあるという柿沼八重子さん。
メインテナンスで口腔内がきれいになったのをきっかけに、
いい状態を維持しようと自発的にセルフケアを
頑張る方が増えているそうです。
その背景には何があるのか、お話をうかがいました。
このあいだ、ある患者さんの歯がすごくキレイに磨かれてきてビックリしました。もともと歯肉縁下のSRPが必要なくらい歯周病が進んだ方だったし、そんなに頑張ってくれるほど私に心を開いている感じでもなかったのに(笑)。何がきっかけだったんだろうと振り返って思い当たったのは、メインテナンスで6倍のサージテルを使い始めたこと。縁下歯石を取り残さなくなり、歯肉がいい状態になってきたのをご自身で実感したからなんだとわかりました。
前は3ヶ月に一度来ていただいていたにも関わらず、1ヶ所だけ歯肉の炎症がなかなか引かないところがあったんです。毎回2.5倍の拡大鏡をかけてポケット内の洗浄もしていたのですが、いらっしゃるたびになんとなく赤い……。自分では見えているつもりでも、やっぱり取り残しがあったんですよね。
6倍に倍率を上げてライト付きのサージテルに変えてからは、確かに私自身も手応えを感じました。今まで見えていたと思っていた部分が、確実にもっとよく見えるんです。根面をさわったときの感触も、いつもよりずっとツルツルしている。実際に次のメインテナンスのときには、「こんなに?」っていうくらい歯肉が引き締まっていました。ご本人も「すごいキレイになったでしょ」とうれしそうだったので、モチベーションを引き出したのはこれだって思いましたね。
おそらく患者さんも、ずっと疑問だったはずです。定期的にメインテナンスへ来ているのに、なんで腫れちゃうんだろうって。ちゃんとお掃除しているのによくならないということは、これが私のお口の限界なのかな……。そう思わせてしまっていたかと思うと、すごく申し訳ない気持ちになりました。
だけど、ちゃんと改善するとわかったことで希望が持てたと思うんです。「自分でもしっかりやれば、もっとよくなるのかもしれない!」。そもそも熱心に通ってくれるのも、今の健康な状態を維持していきたいという気持ちがあるから。その期待に応えられたからこそ、患者さんも頑張ってくれます。
歯科衛生士にとって技術や知識を身につけるのはもちろんですが、術野がよく見えることはとても重要だと実感しました。たぶん私の力だけでは、ここまでの結果につながらなかったんじゃないかな。いくらSRPの腕があっても、見えなければ発揮できないですからね。
それと、2.5倍を使っていた頃は正直自分が満足していただけだったように思います。患者さんの口の中を見るのが、ただただ楽しかったんですよ。とはいえちゃんと成果を出せなければ何にもならないし、〝見ている〟意味がない。歯科衛生士として持っておかなきゃいけない視点を、改めて教えてもらえた気がします。