埼玉県川口市で開業する渥美克幸先生。JIADSエンドコースの常任講師であり、日本で早くから10倍のサージテルを使い始めた歯科医師の一人でもあります。6年前に開設したデンタルクリニックKでは、スタッフ全員がサージテルを使用。今回は渥美先生をはじめ3名に、高倍率のサージテルを使う意味と価値についてお話を聞きました。
渥美先生 僕から拡大鏡の使用を指示したり、医院の方針にしたことはありません。色々な所でサージテルを勧める僕を見ていたと思いますし、買ったほうがいいんじゃない?くらいのサジェストはしたかもしれませんが。こういうことは押し付けるものではなく、個人の自発的な「さらに高いステージを見てみたい」という気持ちが大切だと思います。自分で欲しいと思って身銭を切り、自分のスキルアップやキャリアアップのために使うのなら、最高の投資になるでしょう。でも、一方的に与えられたらあまり役に立たないですよね。
石﨑先生 私は以前の勤務先では裸眼でした。ルーペの存在は知っていましたけれども、実際に手に取ったことはなくて、デンタルクリニックKに入社するタイミングで8倍を購入しました。やはり院長先生と同じものを見なきゃいけないと考えたのが一番の理由です。
篠永さん 私もここに来たときは、拡大鏡は眼が衰えたら使うものだと思っていました。でも渥美先生の講演を聴いたりして、きちんと確実に見るためのものなんだな、と。医院に2.5倍が1台あったので、使わせてくださいとお願いしたのがスタートです。その後は皆さんと足並みを揃えたいと思って、がんばって8倍を買いました。
石﨑先生 たとえば、形成のラインやマージンがすごくきれいに出ます。常に使っているので、今はなければ治療ができないほどです。ただ、これは渥美先生から教えていただいたことなんですけれども、拡大鏡で見ているからといって、それに安心していたら結果は出せない。今自分の眼には何が映っているのかを考えることに加え、眼の前のガッタパーチャを取るにも、根管の中にある折れたファイルを取るにも、どういうアプローチが必要なのかを考えないといけない。見えていることを前提に、さらに知識や技術、道具をきちんと使わないと結果が出ない。このような思考の変化が一番大きいんじゃないかと思います。
そうやって結果を出して、患者さんが喜んでくださるとすごくうれしいですね。最近もエンドでかなり厳しい見立ての方が歯を残してほしいと来院されました。そこで拡大下で丁寧にやらせていただいたら病変がどんどん小さくなって、結果歯を残すことができました。患者さんの利益はもちろん、私も患者さんの歯を救えたということで、とても良い結果になったと思います。
篠永さん 2.5倍では見えなかった所が8倍だと見えるので、今まで怖くて使えなかった器具が使えるようになりました。例えば叢生。見えなかったときはペーストをつけてフロスを通すくらいでしたが、8倍では隙間に対して細いキュレットが使えます。見えているので、この細さでこの力加減なら折れないというのがわかるんです。患者さんに「この重なっている部分、どこでクリーニングしてもらっても、こんなに綺麗にしてもらったことはなかったよ」と言われてうれしかったですね。
以前は歯面を傷つけるのが怖くて積極的に使えなかった超音波スケーラーの極細チップも、8倍なら自信をもって使えます。見ていることと手で感じる振動がリンクしてくるんです。ですから、同じ時間をかけて同じ処置をするのでも、より患者さんに還元できる形でできるようになったと思います。
渥美先生 さきほど石﨑先生も言っていましたが、高倍率の拡大鏡を使っている、その事実に満足していてはだめだと思っています。ただ漫然と見ていると、大切なものを見逃してしまうからです。8倍を使い慣れてきたかな、と思った頃に改めて彼女の仕事を見てみたら、明らかに高倍率の拡大鏡をつけてやっている仕事のクオリティではなかった。そのときに伝えたのは「見ているつもりで、見えていないよ」ということ。その後彼女は色々と考えたんでしょうね。今では大きく成長したと思います。
一回リセットして、改めて見てみる。そうすると、できていないことがわかる。高倍率を使っているからこそ「よくできている」というのも理解できるし、「まだ足りていない」というのも理解できる。そして、「まだ足りていない」というのを知らない限り、次の成長はないんです。
拡大しても、一方向からしか見ないのでは意味がありません。二方向、三方向、四方向から見る。インスツルメントを何方向からもあわせてみる。拡大するだけでなく、そこからどうするか、が大切なんだと思います。言われて、気づいて、やってみて、できるようになって、それがルーティンになって、そのルーティンワークがどんどんハイレベルになっていく。歯科医師と歯科衛生士にとって、これこそがサージテルを使う価値だし、デンタルクリニックKで一緒に臨床に取り組む価値なんだと思います。